オフィス設計のポイント-設計の流れや特徴をご紹介

オフィスを新設、または移転、リニューアルなど、オフィスデザインを再検討する機会には、自社にとって最適なオフィス設計を行いたいものです。特に現在は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大を受け、リモートワークが加速するなど、オフィスの在り方やコミュニケーションの形が大きく変わっています。
今回は、そうした現状を受け、オフィス移転のプロフェッショナルがオフィス設計について、実施する際に必ず行っていることや、オフィス設計の流れ、ポイント、目的別の具体例をご紹介します。

オフィス設計の目的

オフィスのデザイン設計を検討するにあたり、まずは目的を定める必要があります。

コロナ感染拡大前は「おしゃれで最先端のオフィス」といったイメージが真っ先に想起されることが多くありましたが、コロナ感染拡大後は、「感染対策が行き届いているオフィス」や「リモートワークなど多様な働き方と両立するオフィス」といったニーズも出てきているでしょう。

さまざまなニーズがある中で、オフィス設計の最終的な目的は、以下のものとなるケースが多いです。

従来からあるオフィスの基本的な存在意義は、“社員の仕事場”です。そのため、社員が最大限のパフォーマンスを発揮し、リアルコミュニケーションが活性化するオフィスが理想の形でした。

またコロナ感染拡大を受け、感染対策のために座席と座席の距離が適切に保たれていたり、換気しやすかったりするような社員が安心して働けるオフィスや、web会議などのオンラインコミュニケーションを行いやすいオフィス、リモートワークが進む中で薄れがちな帰属意識を強化するオフィスも求められてきています。

また従来から、対外的なブランドイメージ向上や採用強化なども、オフィス設計の目的とされることも少なくありません。

目的を達成するために検討すべきオフィス設計の基礎

オフィス設計を実施するにあたり、まずは先述のような目的を明確にすることが欠かせません。はじめに検討しておきたいことを見ていきましょう。

●オフィスづくりを始める前に検討すべきこと

オフィス設計の目的を明確にするには、改善すべきオフィスの課題を挙げることが必要です。そして、その課題により起きている業務への影響を知り、それらの課題を解決するために実施すべきことを考えていきます。

以下に、改善すべきオフィスの課題と解決策の例を挙げます。

課題の例

  • 社員が頻繁に利用する資料室への距離が遠すぎて無駄な移動時間を生んでおり、パフォーマンスが落ちている
  • 社内でコミュニケーションが取りづらいことから業務に支障が出ている
  • ミーティングスペースから聞こえてくる声が気になり、個人の作業に集中しにくい
  • エントランスに自社の特徴が明確に打ち出されておらず、ブランディングができていない
  • 社員が感染の不安なく、安心して働ける環境ではない
  • web会議が増えたため、会議室が足りない
  • 自席やオープンスペースでweb会議がしにくい

解決策の例

  • 執務室や資料室の位置を見直し、社員の動線を考えたレイアウトにする
  • 社内でコミュニケーションが取りやすいよう、執務室に軽いミーティングスペースを設ける
  • ミーティングスペースに吸音パーテーションを設置する、個人の集中ブースを設置する
  • エントランスにコーポレートカラーを打ち出し、正面の壁に会社のロゴマークを大きく配置する
  • ソーシャルディスタンスをしっかり確保した感染しにくいオフィスレイアウトにする
  • web会議用の会議室や個人用ブースを設計して増やす

このように課題と解決策を検討することにより、オフィス設計の目的とコンセプトを決めやすくなります。

オフィス設計の流れ

目的とコンセプトが決まったら、いよいよオフィス設計に取り掛かることができます。概ね、次の流れで行います。

ゾーニング計画

まずは、「ゾーニング」を行います。ゾーニングとは、機能別のスペースを平面図の上でおおまかに区切って位置を決めていくことです。例えば、執務室のゾーニングであれば、執務エリアとミーティングスペース、個人集中ブース設置スペース、応接スペースなどを配置していきます。各スペースの使用目的や、利用する社員を具体的にイメージしながら行うことがポイントです。

動線計画

次に、オフィス全体を動く社員をイメージしながら、動線を検討します。例えば、部署間を頻繁に行き来する業務の社員がいる場合には、部署間の距離を近くし、通路も通りやすく設計する必要があります。これによって、オフィス内で社員の業務中の無駄な動きを減らすことができるので、作業の効率化を図ることができます。法規上、厳守すべきルールも踏まえて動線計画を立てていきます。

レイアウト策定

ゾーニングと動線計画が立てば、具体的なレイアウトを策定していくことができます。

エリア別のオフィスデザイン設計のポイント

エリア別にオフィスデザイン設計のポイントをそれぞれご紹介します。

●会議室の設計ポイント

会議室は会社のブランディングを印象付けやすい空間です。そのためオフィス全体のコンセプトに合わせてデザインすることが大切です。
また、最近は会議室を応接室として使用する企業が増えてきています。自社の社員だけではなく、来訪したお客様に落ち着いてもらえるようなデザインを設計するとよいでしょう。

会議室をパーテーションで区切る場合は、パーテーションの材質や色をオフィス全体の雰囲気に合わせることで、統一感のある空間を演出できます。

 

【関連コラム】会議室のレイアウトの種類やデザインとは

●エントランスの設計ポイント

エントランスは、会議室以上にブランディングや採用など、来訪者の印象に大きく関わるエリアです。エントランスの設計ポイントとしては、清潔感や信頼感が伝わることが重要となってきます。
エントランスに設置すべきアイテムとしては以下のようなものがございます。

エントランスサイン: 社名やロゴを目立つ位置に設置しましょう。素材は、アクリル板や金属版など会社の雰囲気に合わせて選ぶと良いです。
呼び出しアイテム: 受話器やベル、タブレットなど、オフィス内に繋がる機器を設置しましょう。
観葉植物: 緑があると、来訪者に柔らかく清潔感のある印象を与えることができます。

 

【関連コラム】オフィスエントランス~デザインのポイント~

●リフレッシュエリアの設計ポイント

リフレッシュエリアは、昼食をとったり一息ついたりするほか、社員同士の気軽なコミュニケーションができる場としての役割があります。
それぞれの企業ごとにリフレッシュエリアに社員が求めるものは異なってきますので、まずは自社の社員がリフレッシュエリアに求めるものは何かを調査してみると良いでしょう。

リフレッシュエリアを快適にするためのポイントとしては、暖かみのある照明の設置や、観葉植物を置くなどして視覚的にリラックスできる空間にすることです。

 

【関連コラム】オフィスの休憩・リフレッシュスペース最新事情!

●社員食堂の設計ポイント

社員食堂は従業員の健康に役立つとして、大手企業やベンチャー企業の福利厚生として積極的に採用されています。
社員食堂の設計はデザイン面だけでなく、最適な座席数はどれくらいか、衛生面で不備のない作りになっているかなどに注意して設計を行う必要があります。

 

【関連コラム】社員食堂事情~こだわりオフィスの食堂やカフェはこんなにも魅力的~

目的別のオフィス設計の特徴

ところで、先述のような、よくあるオフィス設計の目的を達成できるオフィスとは、具体的にはどのようなものなのでしょうか。弊社の経験をもとにご紹介していきます。

1.社員の満足度が高まるオフィス

社員の満足度を目的とする場合にポイントになるのは、社員が効率的かつ前向きに業務に取り組めるよう、ストレスフリーの動線を考えることや、随時、リフレッシュできるよう休憩スペースやドリンクバー、軽い運動ができるスペースなどを設ける、観葉植物を設置するなどが挙げられます。

2.社内コミュニケーションが生まれるオフィス

社内コミュニケーションが自然に生まれるよう、会議室とは別に簡易的なミーティングスペースを設ける、カフェスペースやリフレッシュスペースにビリヤード台などの娯楽設備を設けて社員同士の交流を促すといった方法があります。

3.ブランドイメージを高めるエントランスデザイン

エントランスに訪れた顧客や取引先、協力会社などに対してブランドイメージを印象づけるためには、エントランスに企業・ブランドロゴの掲出やコーポレートカラーの使用、商品・サービスの掲出、内線電話のデザインをコーポレートイメージに沿ったものにするなどの方法があります。

4.また来たくなるオフィス

来客者がオフィスにまた来たくなるようにするには、エントランスに居心地の良いソファを置くといった居心地の良さなどの「おもてなし」を提供する、応接室の壁にアート作品を飾って感性を刺激し、印象付けを行うなどが挙げられます。

5.自由なアイデアが生まれるオフィス

オフィス内に、自由な発想が生まれやすい絵画やオブジェなどのアート作品や個性的なデザイナーズ家具を設置する、といった刺激を受けられるようなオフィス設計を行うと、発想の幅が広がり、自然と新しいアイデアが生まれてきやすいでしょう。

6.リモートワーク中心の働き方スタイルで活用できるオフィス

コロナ感染拡大により、リモートワークが中心の働き方が進んでいますが、働き方が変わってもコミュニケーションや社員のモチベーション、帰属意識が低下しない工夫が求められます。
オフィスでは、リアルコミュニケーションをより活性化するために、執務エリアにコミュニケーションスぺースを増やしたり、オフィス内にカフェを設置したりすることも一つの方法です。オフィスに社員同士の交流やくつろぎを促進する空間を作ることで、帰属意識も醸成されやすくなるでしょう。
またオンラインでは議論がしにくいという課題もあるため、オフィスを利用する価値を付加するためにも、会議室にホワイトボードを増設したり、投影システムを導入したりするなど、議論が活発になる設計も有効です。
もちろん働く場所としての機能も重要です。自宅では集中できない社員向けに、集中しやすい個人ブースを作ることも一つのアイデアです。

まとめ

コロナ感染拡大という現状を踏まえた、オフィスの課題や設計の流れ、設計のポイント、実際の具体的なオフィス設計のアイデアをお伝えしてきました。新たにオフィス設計を検討する際には、ぜひ参考にされてみてください。