オフィス移転マニュアル ~6つのやるべきこと~

膨大なタスクを効率的に進めるため、6つのステップにやることを整理したオフィス移転マニュアルをご紹介。全体像を把握した上で細部に目を向けるためのポイントや、移転の目的から外れることなく効率的にプロジェクトを進行するためのコツを紹介しています。

6つのステップでオフィス移転前のポイントを掴む

オフィスの移転は準備段階から原状回復まで長期的な視点に立ち、全体像を把握した上で細部に目を向けるようにしましょう。そのことで細かい部分だけに捉われることなく、移転の目的から外れることなく効率的にプロジェクトを進行することができます。本ページでは、オフィス移転を下記の図のような6つのステップに分解し、ステップごとの大事な項目を抽出しました。

ステップ1:物件選定
[Point 物件選びの基準を明確にする]

最初のステップである物件選定で重要になってくるのは、物件選びで何を重視するかという選択基準です。これはオフィス移転のコンセプトになるものですから、会社のトップも交えてヒアリングを行い明確にしておきましょう。

物件候補を探す段階でこれが曖昧だと、いくら候補となる物件をピックアップしてもトップの了承を得られない場合があります。しかし、今回の移転がたとえば「広さと立地を最優先する」とい選択基準で上層部とコンセサスが取れていれば、トップとのズレが生じるリスクは軽減します。 その上でやはり無視できないのは新しいオフィスの賃料です。立地ごとの相場価格のリサーチをしっかり行い、そして実際に候補物件の見学時での確認項目をピックアップしておきましょう。

ステップ2:賃貸借契約
[Point 入居時だけでなく、退去時の条件もチェック]

実際に移転先の物件が決まれば、次は賃貸契約に入ります。 このステップで何より大事になってくるのは、確認すべき項目が多い上に細かい内容においても見落としが許されないことです。

賃貸契約は、入居に関する内容の確認はもちろんのこと、入居後の利用ルールや、退去時の解約予告期間・保証金減価償却の有無・原状回復工事の業者指定があるかなど、確認漏れや認識のズレがないようにしておきましょう。

ステップ3:内装設計
[Point オフィスのコンセプトを明確にする]

内装設計において重要になってくるのは、移転先の決定と同様にどのようなオフィスにしたいかという設計コンセプトを明確にしておくこと。たとえば「全社のコミュケーションが良くできるオフィス」が内装設計のコンセプトであるにも関わらず、部屋を多く設ければズレが生じてしまいます。他にも、「人材採用がしやすいオフィス」「社員のONOFFが切り替えられるオフィス」「お客様をおもてなしするオフィス」など、新しいオフィスで何を実現したいのかを明確にすることが大切です。

そして、実際の業務がスタートした際に支障や不具合が起こらないように設計段階でも、自社のオフィスコンセプトを常に意識し、その防止に努めましょう。

その他にも、IT機器関連はトラブルがあると大きな影響が出ますので確認を徹底しておきたいものです。また意外に見落とされてしまうのが防災と防犯に関するチェックです。緊急時の導線確保などよく施工会社に確認しておきましょう。

ステップ4:新オフィスの内装工事
[Point ビル側に工事内容の合意を得る]

実際に新オフィスの工事に入った段階で大切なのはビル側と工事内容についてあらかじめ確認し、合意を得ておくことです。これを怠ることで工事において問題が発生し、隣接するオフィスなどからクレームが起これば後々の関係にも影響します。ビル側との合意は単に契約上の問題ではなく、今後、社員の皆さんが気持ちよく仕事をしていく上でも大切になってきます。

また、オフィス工事でよく耳にする「A工事」「B工事」「C工事」(※)ですが、B工事に分類される工事に何が含まれるかで、入居者の費用負担が大きく変わってきます。

たとえば、間仕切り設置により発生する空調移設工事は、ビルによってB工事かC工事かの定義が異なります。B工事の場合は、ビル指定業者が施工するため、費用コントロールができないばかりか、工事費が割高になることが多々あります。事前に、C工事の施工業者に相談するなどして、工事区分の調整をすることも一つの方法です。

  • A工事:ビルオーナー費用負担のビル指定業者工事(躯体工事や共用設備工事など)
  • B工事:入居者費用負担のビル指定業者工事(空調・照明・防災工事など)
  • C工事:入居者費用負担の入居者指定業者工事(オフィスの内装工事)

ステップ5:新オフィスへの移転
[Point 社員同士の温度差を埋め、必要事項を周知徹底する]

様々な準備が整い、実際に迎えた移転日までに全社員に厳守事項、注意事項の周知を徹底しておくことです。

移転のプロジェクトチームとそうでないメンバーとの温度差はかなりあります。その意味において、たとえば運送業者がデスクを移動させる前に各自が机の中身を段ボールにまとめておくなどやるべき事柄がしっかり伝わるよう、徹底周知を図りましょう。

ステップ6:旧オフィスの原状回復
[Point ビル側への事前確認を徹底する]

旧オフィスの原状回復においては、とにかくビル側との事前の確認を徹底し、また工事の実施においても注意事項を細かく検討することでトラブルを回避したいものです。原状回復については実際にトラブルが多く発生していることを認識しておきましょう。

オフィス移転後にすべきこと

オフィス移転後は、移転当日と移転後1か月を目安に各種届出や住所変更手続きを行います。それぞれの対応方法を解説していきます。

◇移転当日

移転当日、移転後は荷物や什器が漏れなく届いているか、破損がないかを確認します。什器そのものや、オフィスの壁や床などに搬送時の傷などがないかも入念に確認しましょう。

◇移転後1か月以内

移転後は、できるかぎり速やかに、遅くとも1か月以内には各種届出、住所変更や移転のお知らせ送付などを行いましょう。

1.各種届出

一般的に届け出が必要な機関と届出内容を下記に示します

  • 法務局(登記所)
    本店移転登記申請書を移転日の翌日から2週間以内に提出して申請します。
  • 税務署/都道府県税事務所
    必要な各種変更異動届出の書類を1か月以内に提出します。
  • 社会保険事務所
    所在地・名称変更に関する書類を1か月以内に提出します。
  • 労働基準監督署
    各種届出書類を提出します。それぞれ期限が異なります。
  • 公共職業安定所(ハローワーク)
    各種変更届を変更のあった日から10日以内に提出します。
  • 郵便局
    郵便物届出変更届を速やかに提出します。

2.口座・クレジットカード情報の変更

法人契約の銀行口座やクレジットカード等の法人住所等を登録しているものについては、速やかに住所変更を行います。