オフィス移転費用の相場と内訳 ~費用を抑えるポイントとは~

オフィスの移転を行う際、いったいどのくらい費用がかかるのでしょうか。住居の引っ越しとは異なり、面積や利用人数も異なるため、イメージが湧きにくいことと思います。 本コラムでは、オフィス移転にかかる費用と費用を抑えるポイントを紹介します。 オフィス移転の計画時にどこまで詳細に費用を想定できるかが、プロジェクト成功のカギをにぎります。また、オフィス移転費用の会計処理の方法も解説いたします。これからオフィスの移転を計画される方はぜひご参考ください。

オフィスの移転費用の内訳と相場

オフィス移転にかかる費用として、大きく「引っ越し費用」「現在のオフィスの退去にかかる費用」「移転先のオフィスにかかる費用」の3つに分類されます。それぞれ費用の内訳と一般的な相場をご紹介します。

引っ越し費用

オフィスの引っ越し費用の相場は社員1人当たり2万円から5万円となっていますが、オフィスの立地条件によっても異なります。また、新オフィスまでの距離や精密機器の運搬はどのくらいあるか、家具の組み立ての有無などによっても変動がございます。

現在のオフィスの退去にかかる費用

「資材・文書の廃棄およびリユース・リサイクル費用」
業者によって費用は大きく変動するようです。また買取り可能なものがあるかどうかでも変わってきます。

「原状回復費用」
小規模オフィスの場合、坪単価4~6万円、中規模から大規模オフィスの場合は坪単価5~10万円が相場となっています、ただこちらも業者によって変動があります。

「住所変更に伴う費用」
本社移転の場合は、登記の変更がございますが、こちらに関しても費用がかかってきますので、国税庁のホームページで確認すると良いでしょう。また、封筒や名刺など本社所在地が印字されている物の変更に伴う諸経費などもかかってきますので、あらかじめ予算として抑えておくと良いでしょう。

「解約違約金」
契約期間満了時以外に解約が行われた場合には、解約違約金が発生します。解約違約金の相場としては賃料の3ヶ月分と言われていますが、新オフィスの契約金と合わせると負担は大きくなるので、事前に契約期間を確認しておくと良いでしょう。

移転先のオフィスにかかる費用

「移転先内装工事費用」・・・1坪当たり10~30万円ほど
「預託金(敷金・礼金)」・・・敷金は賃料の6~12か月分、礼金は1か月分
「仲介手数料」・・・賃料の1か月分がほとんど
「保険会社加入料」・・・賃料の1か月分がほとんど
「火災保険料」・・・2年間で2万円程度
「電話・LAN工事費」・・・1坪当たり10~15万円ほど

その他、備品や家具を新たに購入する場合の購入費用などがございます。

 

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新オフィスの構築に必要な工事費用

移転先の新オフィスにかかる費用のうち、内装工事費用について詳しく解説します。

●内装工事にかかる費用

先述の通り、内装工事にかかる費用は、一般的なオフィスで1坪当たり10~30万円ほどが目安です。幅があるのは、レイアウトや設備をどのくらいこだわるのかによって変わってくるためです。
内装工事の中には、電気・空調・防災などの設備工事が含まれます。それらを新設するといった場合、一般的な内装工事費用より割増しになります。

●ネットワーク機器関連の移設・設置費用

ネットワーク機器や電話機、複合機などを移設・設置する場合は、一般的に1坪当たり5~15万円程度かかります。電気・電話・LAN工事は、工事スタッフ1人あたり5~8万円程度かかるといわれています。

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●什器等の購入費用

もしデスクや椅子、パーティション、収納ワゴン、応接セット、カウンターなどの什器を新調する場合には、購入費用がかかります。オフィス利用人数や規模によって異なってきます。

オフィス移転費用を抑えるポイント

これまでオフィス移転にかかる費用をご紹介してきましたが、オフィス移転費用は莫大となるため、少しでも安く抑えたいものです。ここでは、オフィス移転費用を抑えるポイントを3つご紹介します。

① 依頼業者を一社にまとめる

物件選定業者や工事業者などそれぞれ業者を分けて依頼すると、それぞれの業者から手数料が発生し、トータルコストが高くなる傾向がございます。
オフィス移転をトータルでサポートしてくれる業者にお願いすれば値下げ交渉などにも応じてくれるケースもあり、また、複数業者とのやり取りによる担当者の負担を軽減することができます。
ザックでは、オフィス移転先物件の選定から、オフィス移転プロジェクトのご提案・設計・施工/工事・アフターフォローまで、オフィス移転に関するすべての作業をサポートしています。

② フリーレントで契約

フリーレントとは、一定期間家賃を無料にできる契約形態の事です。
移行期間は旧オフィスと新オフィスとで二重の家賃が発生してしまうので、フリーレントが利用できれば支払いは旧オフィスの家賃のみで済み、負担を軽減できます。
注意点としては、フリーレントシステムを導入している物件では契約期間外の解約に関しては違約金を通常より高く設定しているところもあります。
フリーレントで借りられるメリットは大きいですが、途中解約によってコストが大きくかかってしまうと結果的にコスト削減にはならないので、事前に契約期間の確認を行うと良いでしょう。

③ 居抜きオフィスを利用する

居抜きオフィスとは、前の借主が使用していた家具やレイアウトをそのまま引き継いで入居できる物件です。
通常、オフィスを退去する際は原状回復工事を行い、入居時の状態に戻す必要がありますが、居抜きオフィスは入居前の工事が不要となり、工事費、家具購入費を抑えることができます。

オフィス移転コストシュミレーションのポイント

オフィス移転のコストシュミレーションを行う際のポイントをそれぞれご紹介します。

引越し費用 実際の荷物の量、移動距離、時間帯、ビルの搬出入経路や エレベータの状況等を査定して費用が決まるため、同じ面積の移転でも 金額に差が生じます。
資材・文書の廃棄およびリユース・リサイクル費用 不要となった什器備品、社外秘文書の廃棄やリユース・リサイクルにも 想像以上に費用と工期がかかるので注意が必要です。
移転先内装工事費 大規模な造作費用はもちろん、簡単なパーテーションの設置や、什器備品の 購入についても、施工業者から見積りを取ります。
原状回復費 ビル指定業者が決まっている場合は、その業者から見積と工程表を受領し、内容の精査を行います。工程については、引渡期日に間に合わないと、予定外の費用が発生するので注意が必要です。
預託金(敷金・保証金) 契約締結日前日までに預け入れることが一般的です。駐車場についても通常、別途預託金が必要となります。退去時には、原状回復費以外にも一部償却費として差し引かれる場合があります。
現入居ビルの預託金については、返還時期が引渡後、数ヶ月先になることもあるので、移転費用等へ充当することは考えないほうが安全です。
仲介手数料 契約締結時、仲介業者へ手数料(賃料の1ヶ月分)の支払いが必要となります。
電話・通信工事費 電話回線の接続やLANの配線には専門業者の工事が必要な場合もあるので、事前にチェックが必要です。また、光ケーブルを必要とする場合は、ビルまで敷設されていなかったり配管スペースがなかったりすると、引き込みコストに加え、使用開始までに日数がかかるので注意が必要です。
IT関連機器移設費 一般の引越し業者が取り扱わない大型コンピュータやサーバーの移設等は特別な対応が必要となるので、事前に確認しておく必要があります。
その他移転に係る諸経費 移転挨拶状の印刷、発送費、会社案内・業務案内・名刺・社用封筒等のリニューアルや印刷費用もリストアップします。

オフィス移転費用の勘定科目

ここでは、オフィス移転費用を計上する際に使われる勘定科目をご紹介します。

引っ越し費用の勘定科目

オフィス移転の引っ越し費用は「雑費」として仕訳されることが一般的ですが、引っ越し業者に支払う費用については以下のような勘定科目を用いて処理することができます。

  • ・雑費
  • ・支払い手数料
  • ・荷造運賃

原状回復の勘定科目

原状回復の勘定科目は「修繕費」として処理されることが一般的です。修繕費は経費扱いとなるため、事務所やテナントを借りている場合は、原状回復費を全額経費として計上することができます。

オフィス内装工事の勘定科目

内装工事の勘定科目は以下、4種類に分類されます。
①「建物」… 建物勘定は新築の場合に限ります。建築中の場合は、「建設仮勘定」で計上されることもあります。
②「建物付属設備」… 電気設備、ガス設備、衛星設備、冷暖房設備など、設備工事に関するものは、建物付属設備として計上されます。また、パーテーションやエアーカーテンなどもこちらに該当します。
③「備品」… デスクやコピー機などの機器や消耗品で20万円以上のものは備品として計上されます。
④「諸経費」… 内装工事のデザイン費や人件費、工事に関する官公庁手続きなど工事に間接的に要したものは諸経費として計上されます。

仲介手数料の勘定科目

新しいオフィスを契約する際に不動産会社に支払う仲介手数料は「支払い手数料」の勘定科目を用いて処理することができます。ただ、オフィス移転は定期的に行われるものではないため「雑費」として処理することも可能です。

保険料の勘定科目

新しくオフィスを借りる際は火災保険、地震保険に加入することになるかと思います。その際、「火災保険料」「地震保険料」の支払いが発生しますが、これらは「損害保険料」の勘定科目を用いて処理することができます。それぞれの保険料を区別しておきたい場合は、補助科目や備考欄へのメモを記載しておくと良いでしょう。

オフィス移転費用の会計処理の方法

オフィス移転の引っ越し費用は一般的に「雑費」として会計処理されますが、オフィス移転の際は旧オフィスと新オフィスそれぞれに関わる費用についても会計処理を行う必要があります。

旧オフィスに関する会計処理

■原状回復費
オフィスを退去する際には、入居前と同じ状態に戻すための原状回復工事が行われますが、こちらの費用は「修繕費」として計上するのが一般的です。

■廃棄処理費用
新オフィスでは使わなくなる備品などの廃棄物は「固定資産除却損」として計上処理するのが一般的です。

新オフィスに関する会計処理

■保証金や敷金
保証金や敷金に関しては退去時に返還される想定ですので、経理上では資産として扱います。
ただし、「礼金」に関しては、会計処理が必要です。
金額が20万円未満の場合は勘定科目は「地方賃貸」もしくは「支払い手数料」を使い、全額費用として処理することができます。
金額が20万円以上の場合は繰越資産として扱い、支払い時は勘定科目は「長期前払費用」を使い繰越資産に計上し、決算時には勘定科目は「地方賃貸」もしくは「支払手数料」を使い償却が必要となります。