ビル空調の落とし穴
新型コロナウィルス感染拡大の影響で、「密閉、密集、密接」の“3密”を避けて過ごすことが求められる中、オフィス環境も見直しを行う必要があります。そして、その中でも、オフィス空調の役割はさらに重要になっています。
ところが、多くのオフィスビルに設置されているエアコンは換気できないことが多く、窓を開けることができないビルの場合には、エアコン以外で換気を行う必要があります。
また、二酸化炭素濃度や温度などの空気環境が業務効率を左右することもあるため、オフィスの換気を見直すことで、業務効率アップにもつながると考えられます。
そこで今回は、より快適な環境づくりのためのオフィスの換気にまつわる落とし穴や正しい換気方法をまとめました。
オフィスビルでよく見かける空調
オフィスには通常、空調設備が整っています。部屋にはエアコンがあることが多いため、空気はいつも入れ替わっているというイメージを持っているかもしれません。しかし、それが落とし穴となることもあるのです。多くのエアコンは換気ができないにもかかわらず、エアコンが作動しているだけで「換気できている」と思いがちです。エアコンは、室内の空気を吸い込み、その空気の温度を変えた後に室内に空気を戻しているだけで、外の空気と入れ換えてはいないのです。
そのため、別途、換気が必要となります。換気とは、室内の空気と外気を交換することです。外の空気を室内に取り入れ、室内の空気を外に追い出すことで、室内の空気中の汚染物質を排出・希釈します。空気中の汚染物質には、二酸化炭素(CO2)や一酸化炭素(CO)などのガス状汚染物質や、浮遊粉塵、アスベスト、アレルゲン、カビ、細菌やウィルスなどの粒子状汚染物質があります。これらは人の健康や業務に悪影響を及ぼします。
換気には、自然換気とファンを用いた機械換気の2通りがあります。通常、オフィスには換気設備が設置されており、そこで空気の入れ替えを行っています。換気設備には、電源を入れることで換気ができるものや、全熱交換機を有し、エアコンと連動しているものもあります。
天井に換気扇がついている場合
電源を入れることで換気が可能
全熱交換機があり、エアコンと連動している場合
エアコンの電源を入れることで同時に換気が可能。 エアコンの電源を切っていると換気も作動していないため、今一度確認を
換気できない空調が設置されているビルの場合の換気の仕方
ほとんどのエアコンは換気ができないことから、オフィスで換気を行うには、換気設備を使いながら、窓やドアを開けて自然換気も行うことが必要です。
わざわざ窓やドアを開ける必要があるのは、オフィスは新築時と比べてレイアウト変更されることも多く、空気がこもりやすくなっていることもあるためです。また、新型コロナウィルスの感染予防対策をより徹底するためにも、自然換気は重要です。業務と業務の合間や休憩時間などを利用し、窓や部屋のドアを開けて、空気の入れ替えをしましょう。
換気を強化したい場合は、換気回数を増やすことがポイントです。換気回数とは、1時間に何回、その空間の空気が外気と入れ替わったかです。窓を開けて換気するときには、1時間に10分の換気を1回行うより、5分の換気を2回行うなど、できるだけ回数を多くすると、より効果を高めることができます。
窓を開けることによる換気の際には、一面の窓開けよりは、二方向の窓開けのほうが、換気量も換気効率も向上するといわれています(①②)。窓が一面にしかない場合は、窓を開き、部屋の入口ドアも開くようにしましょう(③④)。
窓が開かない部屋の換気の仕方
窓がない、もしくは開かない部屋の場合、その部屋の周辺の天井にある、排気の換気口の位置を確認し、空気の流れを確認してください。換気口が部屋の中にある場合、部屋のドアを開け、扇風機やサーキュレーターなどを置き、部屋の中に空気が流れるようにすると換気がされやすくなります。
排気の換気口が 部屋の外にある場合は、入り口のドアを開けて扇風機やサーキュレーターなどで部屋の外に空気を出すようにしましょう。
特に狭い会議室などでは使用前、使用後に自然換気を行うことをおすすめします。
現在の新型コロナウィルス感染予防対策としてはもちろん、オフィス内の業務効率アップのためにも、意識的に空気環境作りに力を入れていきましょう。
(参考)
上手な換気の方法~オフィス・店舗編~