フレキシブル・ワークスペースを取り入れて働く場所の多様化を実現

新型コロナウイルス感染症の感染拡大を受け、働き方や働く場所は多様化しています。そんな中、注目を集めているのが働く人が柔軟に働く場所を選ぶ「フレキシブル・ワークスペース」の考え方です。

そこで今回は、フレキシブル・ワークスペースを取り入れ、働く場所の多様化を実現する方法をご紹介します。

働く場所の変化がもたらした企業に求められる変化

働き方改革の推進で働き方が多様化する中、コロナ禍によりテレワークやサテライトオフィスの活用が増えるなど、働く場所の多様化も急速に進みました。

こうした状況を受け、働く人々も、より柔軟に働く場所を選ぶことができることや、自由度高く仕事ができる環境への意識が強くなっています。 企業側としても、より優秀な人材を確保したり、ブランディングを行ったりする必要性が増しています。

このことから、企業が提供する「働く環境」にも大きな変化が求められており、柔軟に働ける環境を確保していくことが重要となっています。

そのような流れの中、急速に広まっているオフィスに関する考え方があります。それは「フレキシブル・ワークスペース」です。

フレキシブル・ワークスペースとは、英語の「flexible(フレキシブル)=柔軟な、融通が利く」と「ワークスペース=働く場所」を合わせた言葉で、働く人が自由に、効率を考えて選択できる場所そのもの、またはそうしたワークスペースを用意する考え方を指します。

フレキシブル・ワークスペースには、例えば、コワーキングスペース、シェアオフィス、サテライトオフィス、レンタルオフィス、自宅や公共スペースなどがあります。

今後は、企業が働く場所を本社のオフィスだけでなく、サブオフィスや郊外オフィスなどを複数用意するといった対応の変化が求められていくと考えられます。

多様化する働く場所 それぞれの特徴は?

フレキシブル・ワークスペースとして、現在は本社オフィスだけでなく、レンタルオフィスやサブオフィス、郊外オフィス、自宅兼オフィスなど、多様化しています。そこで、それぞれの働く場所の利用する目的やメリットのほか今後、期待できる活用法や設備改善・投資方法をご紹介します。

●本社オフィス

本社オフィスは、これまでの本拠点としての目的だけでなく、従業員が定期的に集まる場所へと変化していっています。

目的・メリット・利用方法

テレワークが浸透している今、本社オフィスの目的は、従業員がコミュニケーションのために集まる場所、従業員に会社の方針やミッションを周知・共有するための場所などの意味合いが強くなってきています。
本社オフィスのメリットは、そうした自宅やサテライトオフィスにはない「中心的」「従業員が集まる」「コミュニケーションが最も活性化する」といった意味合いから、結束の高まる場所といえます。この本社オフィスをいかに有効活用するか、そして有効活用できるような環境を整えておくことが重要といえます。

今後、期待できる活用法

在宅勤務の環境が構築しにくい従業員を救う観点や、コミュニケーションやエンゲージメントの低下を防ぐといった課題解決に本社オフィスは重要な存在となります。そうした価値のある場所にするためには、どのような働き方にも対応できるように環境を整えていくことが有用です。
また本社オフィスの一部を開放し、社内サテライトとしての機能を付加するのも有効です。本社オフィスを含めて、サブオフィス、郊外オフィスなど複数のサテライトを用意することで、フレキシブルな働き方を促進します。

設備改善・投資方法

オフィス内に個人ブースを用意して集中できるスペースを作るほか、従業員が集まってコミュニケーションを取ることのできるスペース、Web会議用のスペース、社外の人とのコミュニケーションを促すスペースの構築など、社内外にアピールするものを組み込むのも一つの方法です。

●レンタルオフィス

レンタルオフィスとは、専有スペースを借りてそこをオフィスとする方法です。他の会社や個人事業主等のオフィスが隣り合わせになっているほか、会議室などは共用スペースを利用することになります。

目的・メリット・利用方法

広いオフィススペースが不要な小規模な会社の場合によく利用されているほか、レンタルオフィスをサテライトオフィスとして活用し、従業員のテレワーク場所として確保する企業もあります。水道光熱費などの固定費がなく、解約時の負担が少ない点、テレワークに利用できる点などがメリットとして挙げられます。
しかし一般的にレンタル料が割高になりがちで、他の会社と同じビル、同じフロア内に同居し、共用スペースも利用するといった点から、情報セキュリティが懸念点となります。業務に集中しにくいということもあるかもしれません。

今後、期待できる活用法

今後は、テレワークができる場所としての活用が広がっていくことでしょう。

設備改善・投資方法

重要なのは、セキュリティリスクを十分に検討することです。また集中できるかどうかも重要視して、検証していく必要がありそうです。場合によっては自社でサブオフィスを用意するほうが効率的かもしれません。

●サブオフィス

サブオフィスとは、サテライトオフィスの一つです。例えば、会社で所有する物件である社員寮や研修センター等の一部をオフィス化し、サテライトへ転換する方法があります。

目的・メリット・利用方法

従業員が本社に出社せず、最寄りのサブオフィスを利用することで、通勤の負担を減らします。また複数拠点に従業員を分散させることで感染リスクを減らし、オフィススペースを有効活用できるというメリットもあります。自宅でのテレワークでは集中しにくい、環境が確保しにくいといった従業員の助けにもなります。

今後、期待できる活用法

導入後は、状況によってワーキングスペースを減らしたり、反対に大きなスペースを確保したりするなど、柔軟にスペースの量を変えていくことで、生産性向上が期待できます。

設備改善・投資方法

サテライトオフィスを構築する際と同様、ネットワーク環境やセキュリティ環境、個人やグループワークそれぞれの活動場所を用意しておくと、従業員の使い勝手がよくなるでしょう。

●郊外オフィス

郊外オフィスとは、郊外に自社のサテライトオフィスを構えることです。支社の一部を解放する方法もあります。

目的・メリット・利用方法

郊外オフィスは、コロナ禍におけるテレワークの主役ともいわれているもので、感染リスクを抑えながら効率的にテレワークができる方法です。従業員を郊外に住まわせる、もしくはすでに郊外に住んでいる人であれば、自宅と郊外オフィスのどちらかを選び、フレキシブルに仕事場所を選べるようにすることができます。
通勤の時間や負荷を軽減し、社員のワークライフバランスの向上が期待できます。サブオフィス同様、自宅でのテレワークで集中しにくい、環境が確保しにくい従業員の助けにもなります。またBCP対策、つまり災害時の事業継続にも有用です。

今後、期待できる活用法

テレワーク化を推進できるほか、採用の観点からも有効といえます。居住地の関係で採用できない人材も、郊外オフィスがあることで、採用できる可能性が高まります。また、従来であれば人材確保とオフィス面積は原則として比例しましたが、郊外オフィスまたはサブオフィスを活用すれば、必ずしも「社員増員=オフィス面積増加」とはなりません。オフィス面積を考慮することなく、弾力的な人材採用が可能です。
また、ワークとバケーションをかけあわせたワーケーションの活用の可能性もあります。サウナ・温泉・テーマパーク・キャンプ場などが最寄りにあることで、休暇と仕事とのバランスをとりながら働くことができます。

設備改善・投資方法

サブオフィスと同様に、ネットワーク環境やセキュリティ環境、個人やグループワークそれぞれの活動場所を用意しておくと、従業員の使い勝手がよくなるでしょう。

●自宅兼オフィス

自宅兼オフィスとは、いわゆる在宅勤務を行う場所です。テレワークといえば在宅勤務ですが、自宅にいかに働く場所を作っていくかが重要です。

目的・メリット・利用方法

コロナ禍においては、自宅兼オフィスの目的は従業員の感染リスクを抑えることがメインとなります。長期的に見た場合には、経費削減につながります。また環境をしっかりと整えれば集中しやすく、業務効率が上がります。通勤時間の削減により、ワークライフバランスが働き手にもたらされ、離職率の低下にもつながるでしょう。
しかし、在宅勤務は仕事状況が不透明になることから、従業員の能力や評価の判定がむずかしくなります。また情報漏洩リスク、従業員同士のコミュニケーション不足による生産性の低下、エンゲージメントの低下などのデメリットも多くあります。

今後、期待できる活用法

自宅兼オフィスの成功は、上記で挙げた多数のデメリットをいかに解決しながら構築していけるかにかかってきます。

設備改善・投資方法

在宅勤務の課題を解決するために、本社オフィス、サブオフィス、郊外オフィスなど、フレキシブルに働く場所を用意ようにしておくかが、効率を上げる一番のポイントになるのではないでしょうか。

「オフィス×テレワーク」を掛け合わせることでより柔軟な働き方や働く場所を実現

企業という組織には、多様な人々が勤めており、各々望む働き方が異なります。テレワークでずっと仕事をしたいという人もいれば、オフィスで業務を行ったほうが生産性が上がるという人もいます。

これまで、企業は組織として一つのまとまりをどう形成していくかということが重要でしたが、テクノロジーの発展や外部要因による急速な時代の変化により、「個々人」の働き方や業務、キャリアの実現という考え方が大きく広まっています。

このような中で、いかに強固な組織作りをし、同時に、いかに個人の働き方を尊重しながら働く環境を築いていけるかが重要になります。

かといって全員テレワークにする必要も、オフィスをなくす必要もありません。これからは、フレキシブル・ワークスペースの考え方を取り入れ、企業が戦略的に、従業員一人一人が柔軟な働き方を実現できるような、オフィスとテレワーク両方を掛け合わせたハイブリッドな働く場所を提供することが重要ではないでしょうか。

まとめ

フレキシブル・ワークスペースの考え方は、今後もますます浸透していくと考えられます。生産性向上、従業員の満足度アップのほか、採用、ブランディング、そして組織の存続とともに従業員一人一人の自己実現のために、積極的に働く場所を見直し、改善していくことが重要といえます。