”働く”に関する新しいキーワードまとめ
昨今の「働き方改革」や新型コロナの感染拡大を受け、これまでの“会社に出社して定時に働く”といったような画一的な働き方ではなく、時間や場所を問わないなど、さまざまな働き方が生まれています。
それに伴い、“働くこと”に関する新しいワードが次々と生まれています。それらのワードの意味を知ることで、これまでと違う働き方の視点が生まれるかもしれません。ぜひ確認しておきましょう。
テレワーク・リモートワーク
「テレワーク」とは、「tele(離れたところ)」と「work(働く)」を合わせた造語で、情報通信技術(ICT)を活用して自宅で仕事をする「在宅勤務」、一か所に限定せず、さまざまな場所で仕事をする「モバイルワーク」、本社や本拠地とは離れたところの小規模オフィスで働く「サテライトオフィス勤務」など、施設を利用する働き方の3つに分けられます。
一方で、「リモートワーク」という言葉もよく使われていますが、リモートワークとは、会社から離れた場所で働くこと全般を指します。
テレワークもリモートワークの一つですが、テレワークは国の施策として実施されているもので、「場所」だけでなく「時間」にもとらわれず、さらに場所や時間を「有効活用する」という点で、ただのリモートワークとは異なるとされています。
シェアオフィス
「シェアオフィス」とは、「shared office(共有型オフィス)」のことを指し、複数の企業や個人が、働く環境を共有するオフィスのことです。主に起業家や個人事業主、小規模企業などが利用しています。
シェアオフィスでは、基本的にフリーアドレス制になっており、同じ空間をシェアして、さまざまな業種の人々が働くことになることから、新しい人脈を広がる可能性があるというメリットがあります。これに対して「レンタルオフィス」は、個別の占有スペースをレンタルするもので、シェアオフィスとは異なります。
一方で「コワーキングスペース」という場所もあります。コワーキングスペースの「Coworking(コワーキング)」は、共同や共通の「Co」と働く「Working」をかけ合わせた言葉で、「共同で働く」という意味になります。
シェアオフィスと非常に似ているワードですが、「シェア」と「共同で働く」は異なります。
コワーキングスペースは同じ場所を利用する者同士でコミュニケーションを図り、時には勉強会や交流会などを開くなどして、コミュニティを形成することもあります。シェアオフィスは、あくまで各社、各人がそれぞれ自分の仕事をしており、必ずしも交流があるとは限りません。一方でコワーキングスペースは、交流が前提の場所となります。
ABW
ABWとは、「Activity Based Working(アクティビティ・ベースド・ワーキング)」の略で、Activity、つまり「活動」をベースに、働き方を個人が自立的に選択するワークスタイルのことをいいます。ABWはオランダで生まれました。
ABWの下では、ワーカーは自分が行おうとしている業務は、いつ、どこで行うのがベストパフォーマンスを出せるのかを自ら考えて時間と場所を選んで仕事をします。結果的に、テレワークのように会社の外で業務を行ったり、フリーアドレス制のようにオフィスで固定席を持たずに自由に着席して業務を行ったり、集中ブースやミーティングスペースを利用したりすることから、ABWはテレワークやフリーアドレス制と似ているように見えますが、根本的な考え方が異なります。
テレワークやフリーアドレス制は企業側が定めた働き方の制度である一方で、ABWは企業側が社員一人一人に働く環境の選択をまかせるというワーカー主体の働き方です。同じ生産性を上げる目的であっても、視点や主体となっていることに違いがあります。
フリーアドレス(グループアドレス)
フリーアドレスは、オフィスで固定席を設けずに、従業員が自由に座席やスペースを選んで働く、日本で生まれたワークスタイルです。
フリーアドレスが生まれた当初は、オフィススペースを省くことによるコスト削減が目的でしたが、社員の働き方や生産性に重きが置かれるようになり、社員のコミュニケーション活性化やペーパーレス化の促進なども念頭に置かれるようになりました。
フリーアドレスには、すべてのメンバーがバラバラに座るオールフリーアドレスと、同じ部署やチームのメンバー単位でまとまって座るグループアドレスの2通りがあります。どちらが適しているかは、部署の特性や業務内容、コミュニケーションの頻度などが関係してきます。
健康経営
健康経営とは、経済産業省の定義によれば、「従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践すること」です。
例えば、長時間労働を減らすために「ノー残業デー」を作ることや、オフィス内にリラクゼーションエリアや手軽に身体を動かせるエリアを作ること、専門家による食事や運動指導の導入、健康に良いメニューを提供する社員食堂の開設などが挙げられます。
このように従業員へと健康投資を行うことのメリットは、生産性向上や健康へのリスクマネジメント、組織活性化などが実現し、企業のイメージアップにつながることなどがあります。さらに企業が負担する健康保険料が減るというメリットも期待できます。
ノマドワーカー
ノマドワーカーとは、自分の裁量で時間と場所を選ばずに働く、働き方の一つです。IT技術や機器の発展・進歩などにより、PCとインターネット環境さえあれば仕事ができるようになったことから、こうした働き方が生まれました。
「ノマド」とは英語で「nomad」と書き、フランス語の「nomade」という遊牧民や放浪者を指す言葉が由来といわれます。
近年、出産や育児、介護などのプライベートを仕事と両立させるなどのワークライフバランスが重要視される中、ノマドワーカーの働き方はさまざまなニーズのある人から注目を集めています。
「フリーランス」と似ていますが、フリーランスは個人が独立して仕事を請け負うことであり、あくまで「契約形態」であることから、「働き方」であるノマドワーカーとは異なります。ただ、フリーランスは組織に所属していないことから、ノマドワーカーになりやすいです。
ノマドワーカーの主な職種としてはITエンジニアやデザイナー、記者やカメラマン、ブロガー、コンサルタントなどが挙げられます。
パラレルワーク
パラレルワークとは、2つ以上の仕事や活動を平行して行う働き方を指します。
パラレルは英語の「parallel(平行の、並列の)」からきており、複数の仕事や活動をかけもちしているという意味になります。「ワーク」と言いますが、必ずしも「仕事」とは限らず、例えばボランティア団体での活動なども含みます。実際、会社に勤めながら、何かの非営利団体に所属して活動を行っているパラレルワーカーも存在します。
パラレルワークは「副業」と似ていますが、副業と違う点は、平行して行うすべての活動が「本業」である点です。副業を行う人は、本業とは別に、サブとして空き時間に仕事や活動を行いますが、パラレルワーカーは全部が本業という位置付けになります。
パラレルワークは経営学者のピーター・ドラッカー氏が生み出した概念「パラレルキャリア」が元になっているといわれており、複数のキャリアを同時進行で行っていくことより、組織に依存しない自立した生き方が可能になります。こうした生き方は、21世紀に生き抜いていくために求められるといわれています。
ワーケーション
ワーケーションとは、「Work(仕事)」と「Vacation(休暇)」を組み合わせた造語で、政府が推奨したことから、コロナ時代の新しい働き方として注目を集めています。
仕事と休暇を同時に行うため、場所は休暇に適したリゾート地や地方の自然豊かな地域などになります。
コロナ禍によりテレワークが進みましたが、従業員は在宅やその他の仕事場所で業務を行うことになったものの、必ずしも会社のそばで暮らす必要がないケースもあります。その場合に、会社がワーケーションを認可することで、従業員はさまざまな場所で働くことができます。
ワーケーションが従業員にもたらすメリットは、リゾート地や地方で心身共にリフレッシュできることから、創造性・生産性の向上が期待できる点です。企業にとっては、従業員の生産性アップや社員満足度アップなどが期待できます。 また地方の自治体にとっては、さまざまな人たちが県外から流入することで、地域創生につながります。
ジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用
ジョブ型雇用とは、勤務地を限定して、職務を詳細に定める雇用形態です。テレワークであっても職務を果たし、成果を挙げれば評価されます。ジョブ型は仕事に人を合わせる「仕事基準」であるのが特徴です。
雇用側にとっては、従業員が仕事をしている様子が目に見えなくとも、成果を挙げてくれれば問題ないというスタンスでいられますし、雇用される側にとっても職務を果たして成果を挙げれば正当な評価が受けられるというメリットがあります。
このジョブ型雇用は、海外ではすでに浸透していますが、コロナ禍でテレワークが推進されたことから、日本でも注目されたといわれています。
ジョブ型雇用の対義語となるのが、日本企業に根付いている「メンバーシップ型雇用」です。これは職務や勤務地などが限定されない雇用契約で、終身雇用や年功序列を前提としています。企業の都合により、自由に配置転換を行えるのが特徴です。
コロナ禍でジョブ型雇用により一層の注目が集まり、終身雇用や年功序列が廃れてきているなか、今後はジョブ型雇用が増えていくものと考えられます。
まとめ
“働くこと”に関する主な新しいワードをご紹介してきました。これらの新しいワードを踏まえて、働き方や雇用の仕方、働く環境づくりに務めることで、より時代に即した取り組みが行えるのではないでしょうか。