健康経営を促進するオフィスとは?従業員の健康に貢献する環境づくりの例

近年、「健康経営」という言葉をよく耳にするようになりました。それだけ企業が従業員の「健康」に対して価値を見出してきていることが分かります。従来、人材は“コスト”であるという風潮がありましたが、近年は“資本”であると捉えられてきています。

実際、従業員の健康が企業に及ぼす影響は、プラス・マイナス両面において大きいものです。労働人口が減少する中で、従業員が病気になり、欠勤した場合の損失ははかり知れません。また近年は出社していても肩こりや睡眠不足、体調不良によってパフォーマンスが低下してしまう「プレゼンティーイズム」についても、欠勤・休職を意味する「アブセンティーイズム」と同様に企業にとって大きな損失となると考えられています。

企業が従業員の健康を重視し、健康経営を促進するためには、オフィスづくりを意識的に行っていくことが必要です。今回は、経済産業省の「健康経営オフィスレポート」をもとに、従業員の健康を保持・促進するオフィスとは何かを考察します。

健康経営オフィスとは何か

健康経営を促進するために必要なオフィスとはどのようなオフィスなのでしょうか。

経済産業省「健康経営オフィスレポート」では、健康経営オフィスとは、次のように定義付けられています。

“健康経営オフィスとは、健康を保持・増進する行動を誘発することで、働く人の心身の調和と活力の向上を図り、ひとりひとりがパフォーマンスを最大限に発揮できる場のことです。”

引用:経済産業省「健康経営オフィスレポート

ここでいう「健康」とは、ただ単に疾病予防に貢献するだけでなく、身体的・精神的・社会的に完全に良好な状態にあることを目指し、“イキイキと活気溢れる状態”へ導くことだといいます。

そして具体的に、オフィス環境において従業員の健康を保持・増進する行動は、大きく次の7つに分類できるとされています。

これらの行動をオフィス内で日常的に誘発させることにより、従業員の心身の調和と活力の向上を図ることができます。

健康経営オフィスづくりのメリット

健康を保持・増進する行動を誘発するオフィスを整えると、具体的にどのようなメリットが考えられるでしょうか。主なメリットを挙げてみます。

1.病気やけがによる欠勤、休職、退職の減少(アブセンティーズムの解消)

従業員の健康意識が上がれば病気やけがの予防につながり、欠勤、休職、退職が少なくなります。結果的に企業の生産性、人材確保において損失が減っていきます。

2.健康問題による出勤時の生産性低下の防止(プレゼンティーズムの解消)

出社していても、肩こりや不調などにより集中力が低下し、最大限のパフォーマンスを発揮できないプレゼンティーズムの状態では、企業全体の生産性が下がる一方です。従業員一人一人の健康レベルを底上げすることで、プレゼンティーズムの解消につながります。

3.健康保険料の削減

従業員が健康になり、病院へかかる機会が減れば、医療費が減ります。すると、健康保険料の増加も防ぐことができます。そうなれば、従業員本人と企業の保険料の負担が減ります。

4.従業員の健康意識向上

健康経営オフィスは、従業員の健康意識の向上に寄与します。健康リテラシーが高くなれば、会社だけでなくプライベートでの活動にも健康的な行動を自然と行えるようになり、従業員の生活の質を向上させます。それが結果的に企業にとってプラスとして返ってくるでしょう。

5.企業の活性化につながる

従業員が一人一人、健康でイキイキと仕事に取り組めば、生産性が上がります。すなわち、企業の活性化につながります。

6.企業のイメージ向上につながる

不健康な従業員の多い企業は、企業イメージが下がらざるを得ません。健康を保持・促進するオフィスづくりにより、オフィス内が明るく活性化し、それが社外に伝わることから、企業のイメージ向上にもつながります。

7つの行動をとるためのオフィス環境の整え方

健康経営を実現するための7つの行動を従業員がとるためには、オフィス環境をどのように整えるのが良いのでしょうか。具体的な方法をみていきましょう。

1.「快適性を感じる」

触感、空気質、光、音、香りなど、従業員がそこにいて自然と心地良いと感じる空間にします。適切な換気、正しい姿勢をとれる机や椅子の工夫、目に優しいライト、緑化、パーソナルスペースの確保などが考えられます。

2.「コミュニケーションする」

オフィス内での気軽な会話や挨拶を促進し、笑いや感謝のある快いコミュニケーションがある空間が理想です。また、同僚の業務内容・会社の目標などの共有、共同作業がしやすい環境も大切です。例えば、壁面ホワイトボードの設置、ソファ席などを置いてカフェのような空間づくり、社内新聞の発行・掲示などが考えられます。

3.「休憩・気分転換する」

仕事の合間の休憩や気分転換のために、飲食や雑談が気軽にでき、新聞を読んだり、ネットしたり、睡眠や深呼吸、好きな音楽を聴く、遊ぶ、ひとりになる、マッサージを受けるといった行動ができる空間づくりも大切です。 そのためには、飲食が気軽にできるリフレッシュエリアの充実、飲み物の無償提供、マッサージチェアや卓球台やダーツなどの娯楽設備、シャワールーム、駐輪場の設置、リフレッシュルームでリラクゼーション音楽を流すなどが考えられます。

4.「体を動かす」

座位行動を減らし、ウォーキング、ランニング、ストレッチ、健康器具による運動を促進することが大切です。例えば、立ち仕事ができるスペースの設置、椅子の代わりにできるバランスボールの用意、ストレッチゴムの配布、ヨガスタジオの設置、オフィス内階段などでたくさん歩くのを促すレイアウトにするなどが考えられます。

5.「適切な食行動をとる」

バランスのとれた食事をとり、規則的な食生活を送ることやサプリメントの利用などを促すためには、健康メニューを提供する利用しやすい社員食堂、カフェスペース、お惣菜や野菜の常備システムの設置などが考えられます。

6.「清潔にする」

オフィスの清掃や手洗いうがいの徹底、換気を習慣付けること。また洗面所やレストルームを広くとり、清潔のための行動がとりやすい設備の充実も考えられます。

7.「健康意識を高める」

従業員の健康意識を高めるために、健康診断の定期実施や、手洗いうがい、マスク着用、分煙の勧め、体温計・血圧計など機器の常備などが考えられます。また一定期間の歩数を社内で競い合う歩数チャレンジイベントの開催、健康系アプリの導入なども一つの方法です。

まとめ

健康経営オフィスづくりのメリットや具体的方法を考察しました。企業によって、また既存のオフィス環境によって適した施策があります。健康経営オフィスは企業や従業員にとって大きなメリットを生み出す可能性に満ちています。ぜひ参考にされてみてください。