オフィスから考える、企業のブランディング~移転やリニューアルでブランド力、採用力の強化も~
今、オフィスは変化に迫られています。他社との差別化やバリアフリー化の必要性や、働き方改革によるテレワークの推進を受け、オフィスの在り方の再構築も求められています。
このような中、オフィスそのものが企業の「ブランディング」になることも決して軽視できません。実際、オフィスにおいて企業ブランディングを行い、顧客や取引先との接点強化や、人材採用で効果を出している企業は少なくないのです。
今回は、オフィスにおける企業ブランディングのポイントや事例をご紹介します。オフィスの移転やリニューアルをお考えの場合には、企業ブランディングという視点も盛り込んでみてはいかがでしょうか。
オフィスと企業ブランディングの関係性とは
企業ブランディングとは、企業が顧客とステークホルダーに対して、企業の社会的イメージを共有する施策のことです。
ここでいうステークホルダーには、取引先、顧客以外の地域社会の住民、株主、及び従業員も含みます。
ブランディングとは、企業が対象者に持ってもらいたい感情やイメージを設計することです。そして、その結果生まれる「ブランドイメージ」が、企業と対象者との感情的な接点となります。
企業ブランディングにおいて、顧客やステークホルダーと共有する項目は、企業の価値観、スローガン、企業風土、強み、文化、伝統、従業員など、多くの要素から構成されます。また将来的な企業のありたい姿や、目指すものを見せていくなど、「未来」をイメージさせることも、企業ブランディングの重要な役割です。
製品ブランディングと比べて、共有する項目が多いことから、他社との差別化が図りやすいブランディング手法といえます。
近年は、この企業ブランディングが、オフィスという場で行われているケースが多く見られます。オフィスは、企業と顧客・ステークホルダーとの物理的な接点、交流の場の一つです。このことから、オフィスに企業の価値観、スローガン、コンセプト、企業風土、強み、文化、伝統、そして未来の姿などのブランディングイメージを施せば、企業のブランドを伝えるのに最適な場所となり得ます。
一歩足を踏み入れるだけで、企業の価値観や個性、強みや風土などあらゆることが伝わってくるオフィスは、企業ブランディングに成功しているといえるでしょう。
オフィスをブランディングに活用するポイント
ではここで、オフィスを自社ブランディングに活用するポイントをみていきましょう。
●エントランスは非常に重要
オフィス作りにおいて最も重要とされる”会社の顔”となるエントランスは、企業ブランディングを行う際、特に重要な部分です。エントランスは、来訪者が初めて自社と接点を持つポイントであり、企業の第一印象が伝わる場所です。そのエントランスに、いかに効果的なデザイン・レイアウトや工夫を施し、企業メッセージを表現できるかが最重要ポイントといえます。
●顧客だけでなくステークホルダー全体を意識する
オフィスの企業ブランディングというと、製品を持つ企業は特に、自社製品をアピールするなどして、主に顧客だけを対象と考えてしまいがちです。しかし企業ブランディングの対象はあらゆるステークホルダーも含みます。つまり顧客だけでなく、従業員やこれから採用する人材、グループ会社や協力会社などの事業関係者とのエンゲージメント強化も視野に入れることが重要であるということです。彼らのモチベーションを高めることができれば、売上向上や離職率改善にもつながるでしょう。
採用強化・人材確保につながる効果も
近年、人材不足や採用難などの課題解決のために、オフィス移転やリニューアルにより採用力を強化する取り組みが多くの企業で行われています。オフィスの立地、快適さなどが大きなポイントとなることはもちろん、同時に企業ブランディングを実施することでブランド力が高まり、さらなる採用力強化、人材確保につながる効果が期待できます。オフィスで企業ブランディングを実施する際には、応募者を意識した企業メッセージを伝える工夫もしましょう。
ブランディングを意識したオフィス事例
ここでブランディングを意識したオフィス事例をご紹介します。
●ユーザーとの接点を重視する考え方が反映されたオフィス
米国にある、民泊サービスで世界的に有名な会社の本社オフィスは、まさに企業ブランディングの典型的な事例です。
例えば、ミーティングルームは実際に民泊サービスに掲載されているスペースが再現されていたり、フロアは世界の都市の名が掲げられ、その都市の特色をもとにデザインや雰囲気が色や材質で施されていたりします。
こうしたオフィスで業務を行うことにより、従業員は、自社サービスと民泊利用者を常に意識することにつながります。そして企業は、そうしたユーザーとのつながりを常に意識する姿勢、企業のビジョンをオフィスそのもので表現しています。
●リニューアルした企業ブランドイメージを巧みに表現したオフィス
埼玉県のある塗料メーカーは、工場移転に伴い、エントランスの企業ブランディングを強化するために、対外的に新しく生まれ変わった自社をアピールするべく、リニューアルした企業ブランドイメージをふんだんに盛り込みしました。
壁と床の硬質なタイルと、天然の木材のやわらかな質感とがうまく合わさり、デザインは直線と曲線を巧みに用いた洗練されたものとなりました。また、エントランスに入ってすぐに、来訪者は担当者をタブレット端末で呼び出せる最先端のシステムも導入しました。
待合室や応接室にも、洗練されたシックなデザインが施され、新しく都会的かつ塗料メーカーならではの自然な風合いが同居する、新たな企業イメージが魅力的に表現された場となりました。
●エントランスデザインを統一することでグループ会社のイメージ統一化
ある日本の企業は、複数のグループ企業を持っています。そこでグループ工場の2拠点それぞれのエントランスに、同一のデザインを施しました。
目的は、それぞれの従業員にグループ会社としてのイメージの共通化を図ることにありました。
社名のロゴのモチーフを用いたデザインや木材、白い壁面などナチュラルな雰囲気を施し、独特の雰囲気を構築しました。
これにより、従業員はもとより、ステークホルダーにもイメージ統一化の効果と共に、企業ブランドイメージが定着することでしょう。
オフィスにおける企業ブランディングは、近年、国内外の多くの企業が意識的に取り組んでいます。エントランスはもちろん、従業員を含めたブランディングしたい対象者を加味して、全体的なオフィスデザイン・レイアウトによる企業ブランディングがなされています。
オフィス移転やリニューアル時には、競争力強化、差別化などの売上向上施策のほか、採用力強化も含めた、あらゆる意味での企業ブランディングも考えてみてはいかがでしょうか。